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広報誌Web版「終活について」

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在宅情報マガジン てまり 令和2年 第 3 号

 みなさんこんにちは。逃げる二月とは言いますが、本当にあっという間に二月が過ぎていったような気がします。今、世間は新型コロナウィルスの影響で、多くの催し物が延期または中止となっています。楽しみは少なくなってしまったかもしれませんが、家族や大切な人と時間を共有する機会が増えたと考えれば、少しは気持ちが上向きになるのではないでしょうか。まだまだ寒さは続きます。引き続きマスクの着用や、うがい手洗いを行い体調管理をしていきましょう。

 過日、「終活について」のお話がありましたのでご紹介します。

 

◎地域交流施設で、健康推進教室が行われました。

 自らの人生の終わりに向けた活動の略語である『終活』。言葉としても活動としても、この『終活』は私たちの生活にずいぶんと浸透しています。みなさんは、もしもの時に備えたお墓やお金、葬儀について大切な人と話し合いをする『人生会議』や、『エンディングノート』などの取り組みをしていますか?

 今回は、誰しも訪れる人生の最後の迎え方についてしっかりと考える内容になっています。少しでも多くの方にとって今後の生き方のヒントになれば幸いです。どうぞご覧ください。

 

★今回の講師のご紹介

 今回の講師は、南大牟田病院で看護部長を勤める森川さんです。森川さんは4月の健康教室に続いて2回目となります。ご自分の体験を踏まえながら、終活の大切さを丁寧にわかりやすく紹介してくださいました。

 

★『人生会議』していますか?

 この問いかけを参加者の方に投げかけてみたところ、「別にそこまで話したことがない」という回答される方がほとんどでした。人生会議には決まった議題はありません。大切にしたいこと、してほしくないことなど簡単なことから話してみてください。

 もしもの時に備えて、自分の気持ちを周りの人へ伝えることはとても大事なことです。自分の気持ちや、価値観を共有してもらえることはその人にとって大きな助けになります。『人生会議』とは、人生の最終段階に向けて、準備することを通し自分の人生をより良いものにするための活動なのです。

 

★人生会議をするメリット

人生会議をするメリットは以下の2つです

 ●あなたの考えや好みが、医療ケアにおいても尊重される。

(例) どんな医療ケアを受けたいのか

     どこでケアを受けたいのか      など

 ●もしもの時には、あなたの考えを想像しながら話し合いをしてくれる。

 家族など、あなたが信頼している方々があなたの気持ちや価値観に触れられる機会になる

 

 病状などにより、あなたの考えや気持ちを周りに伝えられなくなったとき、「あなたならきっとこう考えるだろう」とあなたの価値観や考え方を理解し寄り添ってくれる人が近くにいるととても心強いですよね。それは家族かもしれないし、兄弟・姉妹または、信頼できる友人かもしれません。あなたの気持ちや価値観をよくわかっている人はどなたですか?

※ともに人生会議をする人は一人である必要はありません。

 夫婦と子供で話し合うなど、複数になることもあります。

 

★人生会議で何を話すのか

 先程もお伝えした通り、人生会議に決まった議題はありません。人生会議の目的は、かけがえのない人生を豊かにすることです。話しをしているうちに、自分でも気づかなかった気持ちに気づかされることも多いものです。

 話し合っていなければもしもの時、「本人がどうしたかったのか」「本当にこれでよかったのかわからない」と気持ちの負担がおおきくなってしまいます。お互いの気持ちの負担を減らすためにも、まずは身近なことから話し合ってみてはいかがでしょうか。

 

★人生会議をお勧めする理由

 近年、高齢者の緊急搬送は全搬送者数の5割を超えており、そのほとんどが自らの意思を表明できない状態で救急搬送されています。高齢者の救急搬送では、ご本人やご家族の延命措置を望んでいるかはっきりしない場合があります。救急搬送は【救命】を目的としているので、結果としてご本人が望まない延命措置につながることも少なくありません。病院側が積極的な延命措置をした結果、ご家族が「本当にこれでよかったのか」「こんなはずじゃなかった」と、後悔したり悩んだりすることが多いそうです。

 思いがけない事故や病気の進行により、どなたでも「もしもの時」が突然訪れる可能性があります。事前指示書やエンディングノートは、大変良い取り組みですが、肝心な時にエンディングノートが見つからない、もしくは見ることができる環境にない場合、その人の気持ちを推定することができなくなってしまいます。

 そのような状況を回避する為にも、日頃からどのような最期を迎えたいのか、どんな治療を受けたいのかなどあなた気持ちを信頼できるご家族やご友人、そして身近な医療ケアチームに伝えましょう。話し合いを共有しておくと、より希望が叶えられやすくなります。これが、人生会議をお勧めする理由です。

※今回森川さんが、参加者の皆さん用に準備した『もしもノート』です。

大切にしていることは何か、信頼できる人はだれか、伝えたいことは何か、

など色々なことが書き込めるようになっています。

 

★気持ちは揺れるもの

 人生会議は何度も何度も話し合って構いません。なぜなら、気持ちは揺れ動くものだからです。話し合いを重ね、繰り返すプロセスがとても重要です。一度決めたことだからと思わずに、自身の心の変化に気づいたときは積極的にその時の気持ちを信頼できる方たちと共有しましょう。

 

★治療行為について

◆急変時にはこのような治療行為が行われます。

  • 心臓マッサージ
     心臓が停止した時に胸の上から心臓付近を強く圧迫し心臓を動かす手技。

  • 気管挿入
     呼吸ができなくなったとき、口または鼻から気管に管(挿管チューブ)を入れて、肺に強制的に空気を送りこむ。

  • 人工呼吸器の装置
     人工呼吸器を接続することで、呼吸が停止しても自動的に機械による呼吸を続けることができる。一旦接続すると呼吸状態が回復しない限り機械を外すことはできない。

  • 気管切開
     死が近付くと痰の量が増え、窒息の可能性が高くなる為、喉仏の下の部分に手術で穴をあけ、直接気管に管を入れて痰をとったり、人工呼吸器をつけたりする。これを行うと声が出せなくなる。

  • 血圧を上げる注射(昇圧剤)
     死が近付くと心臓の動きが悪くなり血圧が低下する。昇圧剤を点滴すると心臓に作用して血圧が上がることがあるが、回復の見込みがない状態では多くの場合一時的なものになる。

  • 輸血や血液製剤の使用
     死が近付くと消化管などから出血がしやすくなり、貧血や血圧低下をきたしやすい。輸血や血液製剤(献血者からの善意の血液から製造されたもの)を点滴すると一時的に貧血や血圧が改善することがある。回復の見込みがない状態では使用されないのが一般的。

◆食事が口から入らない、喉がむせて食事が喉を通らなくなったときはこのような医療行為が行われます

  • 栄養補給
    鼻腔栄養
     鼻から胃までチューブを入れて、流動物を流し込んで栄養補給をする。栄養剤が肺に逆流して重症の肺炎を起こすこともある。
    胃瘻
     胃カメラを使ってお腹に穴をあけ、胃の中にチューブを留置する。体の外から直接胃の中に栄養を入れる。
  • 栄養補給の点滴(中心静脈栄養・高カロリー輸液)
     首や股の部分の太い血管から普通よりも濃度の高い点滴をすること。太い管を入れるために肺や血管を傷つけたり、感染症を起こす可能性もある。

 

★おわりに

 人生の終わり方について話すことは、だれしも避けがちではありますが、もしもの時のことを考え信頼できる人と気持ちを共有することは自分らしく生き抜くことにつながると感じました。ぜひみなさん、このてまりを機に一度信頼できる人と家族会議を行ってみてはいかがでしょうか。

 

人生会議は元気な時・心に余裕があるときに!

 

●大牟田地域住民医療・介護情報共有拠点事務室OSKER

 大牟田の医療・介護施設情報を掲載しています。どなたでも好きな写真を投稿できるギャラリーを製作いたしましたのでご紹介いたします。次号は「骨粗鬆症について」をご紹介します。

 

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