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広報誌Web版『放射線の人体への影響』

在宅情報マガジン てまり 令和4年 第3号

皆さんこんにちは。日中はお天気が良いと温かさを感じる季節となりました。これから少しずつ暖かくなっていき、外出する機会も自然と増えてくるのではないでしょうか。満開の桜を見られる日もそう遠くありませんね♪

今回は、『 放射線の人体への影響 』について紹介していきます。

「被ばく」するとはどういうこと?どうして体に悪いの?

「被ばく」するとは・・・?

放射線に「ばく露する(さらされる)」ことを「被ばく」といいます。

放射線は、レントゲン装置やCT装置、放射線同位元素(放射線物質)から飛んできます。

(レントゲン装置やCT装置はスイッチを押したときのみ)

 

放射線被ばくの様式

宇宙、大地からの自然放射線や病院の検査などで人口放射線を受けることを外部被ばく、食事や呼吸などで体内に取り込まれた放射性物質から放射線を受けることを内部被ばくといいます。

※放射線物質が皮膚や衣服に付着した状態を汚染といいます。

身近なところで使われている放射線

私たちの身の回りには、放射線を利用したものがたくさんあります。

その中でも皆さんがよく知っているのは、「エックス線」という放射線を使ったレントゲン検査だと思います。レントゲンは、エックス線が、身体の中を通りぬけたときにできる「かげ」を写真などにうつし出すことで、体の中の様子を見ることができる検査です。

自然放射線

もともと、放射線は宇宙から地球にふってきたり、地球上にある岩などから出ていたり、空気や食べ物にも放射線物質が含まれています。これらの放射線を「自然放射線」と言います。

人間はいつも弱い放射線にかこまれて生きているということになるので、少しの量の放射線なら、人間の体に問題が起こる心配はないとされています。

どうして体に悪いの?

では、どうして体に悪いのでしょうか?

先ほどお伝えしたように私たちはいつも少量の放射線を受けて生活しています。

放射線を身体に受けることにより染色体内のDNAが傷つきますが、人体には損傷を修復する機能が備わっているため、放射線量が少なければほとんど修復されます。また、同じ量の被ばくであっても、数回にわたり、あるいは長期間にわたって被ばくする場合には人体への影響は小さくなります。

ところが、一度に多量の放射線を受けると、放射線によって傷ついた細胞を十分に修復することができなくなり、人体に影響が出るのです。修復されない場合、ほとんどは細胞死して健康な細胞に入れ替わるのですが、修復されない細胞のうち、まれに突然変異を起こす細胞があります。これが普通の細胞で起こると「がん」として現れます。

「被ばく」するとどんな影響があるの?

放射線の人体への影響は、放射線を受けた人(被ばくした人)に影響が出る「身体的影響」と、放射線を受けた人のこどもや孫に影響が現れる「遺伝的影響」とに分けられます。

身体的影響には3ヵ月以内に発症する急性障害、胎児発生の障害、半年から1年以降に発症する晩発障害があり、晩発障害は白内障とがん・白血病に分けられます。

さらに、受けた放射線量とその影響によっても障害は分類され、線量が増加するにつれて重症度が増す「確定的影響」と、がんや遺伝的影響のように線量に比例して発生確率が増える「確率的影響」があります。

確定的影響と確率的影響

  • 確定的影響

しきい線量がある(しきい線量を超えなければ起こらない)被ばく線量が障害重篤度に比例する

  • 確率的影響

しきい線量がない被ばく線量と発生確率が比例する

 

しきい線量この線量を被ばくすると1~5%の人に障害が発生する線量

確定的影響と確率的影響

確定的影響としきい線量

※このしきい線量以上の被ばくをしなければこれらの影響は起こりません

確率的影響

一方、確率的影響では被ばく線量は障害の起こる確率に比例し、しきい線量という概念はありません。

すなわち少しの被ばくでも障害は起こりうるかもしれないと考えられているのです。ただし、100mSv以下の被ばくで障害が有意に増えたというデータはありません。100mSv以下でも比例するかはわからないのです。

がんなどの病気を起こす色々な原因

一度に多量の放射線を受けると、人体を作っている細胞が壊れて、様々な影響が出ます。しかし、100mSv以下の低い放射線量を受けることで将来がんなどの病気になるかは、様々な見解があり、はっきりしていません。普通の生活を送っていても、がんは色々な原因で起こります。喫煙、食事・食習慣、ウイルス、大気汚染などについて注意することが大事です。これらと同様に原因の一つと考えられるのが放射線です。しかし、がんにかかった原因が放射線か、他の原因かは区別がつきません。

身の回りの放射線被ばく

私たちは、日本の平均で年間約2.1mSvの自然放射線を浴びています。放射線を使った検査では、胸のレントゲン検査で0.06mSv、胃のバリウム検査で5mSv、CT検査で、部位にもよりますが、5~30mSvの放射線被曝をすることになります。これらの数値を100mSvと比べてみるとどうでしょうか?レントゲン検査やCT検査などで被曝する線量は、健康に影響を及ぼす可能性のある線量と比較すると、極めて小さいということが分かっていただけると思います。

放射線被ばくと生活習慣によるがんのリスク

放射線被曝と生活習慣によるがんのリスクについて考えていきましょう。

先ほどお伝えしたように100mSvより低い線量での被曝では、がん死亡のリスクが増加することは明らかにはなっていませんが、それを超えるとがんの相対リスクは、徐々に増える事が分かっています。

しかし、右側の生活習慣におけるがんの相対リスクを見てみると、100~200mSvの被ばくによるがんの相対リスクが1.08倍なのに対して、野菜不足が1.06倍、塩分の取りすぎが1.11倍~1.15倍、運動不足が1.15~1.19倍、肥満が1.22倍となり、さらに喫煙、飲酒は1.6倍となります。

つまり、野菜不足は、100~200ミリシーベルト、運動不足は、200~500ミリシーベルト、継続した喫煙は、1,000~2,000ミリシーベルトの被ばくのリスクと同等になります。

 

放射線被ばくと生活習慣によるがんのリスク

放射線から身を守るには

放射線に被ばくしたからといって、必ずしもがんになるわけではありませんが、放射線がDNAを傷つけることは発がんの要因の一つになるので、被ばくを少なくすることは重要です。放射線による被曝から身を守るには、3つの方法があります。

◆ 放射線被曝低減の3原則 ◆

  • 近くにいる時間を短くする
  • 間に重い物を置く、遮蔽(しゃへい)する
  • 離れる、距離をとる

これらを放射線被曝低減の3原則と言います。身体が受ける放射線量は放射性物質からの距離によっても大きく異なり、放射線物質から離れれば、放射線量も減ります。また間に遮蔽物を置いたり、近寄る必要がある場合は、被曝する時間を短くすると放射線量を減らすことができます。

最後に

放射線は目に見えず、臭わないため、得体のしれないものとして恐怖を感じていた方もいらしたかもしれませんが、話を聞いて、医療で使われる放射線量がどの程度か分かったと思います。私たち放射線技師は、被曝をできるだけ少なくし、いい写真をお医者さんに提供して、患者さんの病気発見に貢献できるように日々努力しています。今回のお話で、少しでも安心して検査を受けていただけるようになったらいいなと思います。

 

《クイズコーナー》

Q1空気や食べ物にも放射線が含まれている

Q2私たちはいつも少量の放射線を受けて生活している

Q3放射線を受けた人のこどもや孫に影響は現れない

Q4被曝から身を守るには、間に重い物を置くといい

Q5放射線がDNAを傷つけることは発がんの要因の一つになる

 

大牟田地域住民医療・介護情報共有拠点事務室OSKER

大牟田の医療・介護施設情報を掲載しています。どなたでも好きな写真を投稿できるギャラリーを製作いたしましたのでご紹介いたします。

次号は「 筋肉と健康と寿命 」をご紹介します。

 

<回答> Q1:〇 Q2:〇 Q3:× Q4:〇 Q5:〇

 

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